本の書き方

重版で著者が手にする印税は「ボーナス1回分?!」

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「重版出来!」というドラマが話題のようですが、「重版したら著者はいくらもらえるの?」が気になりませんか?もちろん、印税の金額はピンからキリまでですが、そんな優等生的な答えでは面白くないでしょうから、私の経験でざっくりと説明します。

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重版とは

重版について簡単に説明しておきます。「重版出来!」を見ている方はご存じと思いますが、念のため。

重版の「版」とは

書籍の制作が完了すると、印刷に使う「版」が完成します。版画を刷るための版木が完成したのをイメージするとわかりやすいです。その「版」を使って5,000部、5万部、50万部の本が印刷されます。もちろん、現代の書籍で版木を使うわけではありませんが、イメージはそんな感じです。

最初に作った版を「初版」とよび、その初版に対して最初に印刷する5,000部や1万部が「初版第一刷」になります。作家デビューの方には感動の記念すべき初版発行日は書籍の最後のページ(奥付)に印刷されるのが一般的です。

初版第一刷の印字

初版第一刷の印字

印刷する部数が5,000部なのか1万部なのかは出版社で決定されます。「今回の本は初版5,000部で行きます!」という場合、最初に印刷する「初版第一刷」のことを指します。

版を重ねるのが「重版」

初版の5,000部が売り切れたら追加で印刷することになりますが、それを「増刷」といいます。よく見る「増刷決定!」のフレーズは、このタイミングです。

通常は版を変えずに微調整のみで新たに印刷してくだけなので、奥付には「初版第二刷」、「初版第三刷」、「初版第四刷」、または単に第二刷、第三刷、第四刷と印字されます。

重版が印字される

「刷」の状況が印字される

増刷は同じ版で印刷を重ねることなので「重版」とよぶこともあります。「重版出来」とは、重版が完成したということです。つまり、厳密な意味はともかくとして、増刷と重版は同じ意味で使われます。

初版発行から長い年月が経過した書籍など、微調整ではなく大幅な修正が必要な場合、版を作り直すことがあります。それが「改版」です。奥付には「改訂第二版」や「改訂版」と記されます。

ちなみに「増刷決定!」とか「重版ができました!」の広告を見ると、その本が大ヒットしているように見えますよね。それを機に売れ行きに加速が付くことも期待できます。そんなわけで、あえて初版部数を少なくする場合もあります。

すぐに初版が売り切れて、発売後すぐに「増刷しました!」となる1種のトリックです。あ、マル秘でしたかね。いや、知ってる人は知ってますよね。奥付には印刷部数までは書いてないので、本当にヒットしているのか、初版部数が少なすぎるだけなのか、わからないので。

また、「重版」は著者にとってはこれ以上なく美味しいです。初版を作るための気が狂うほどの苦労に比べれば、増刷時は何もせずに印刷するだけなので。「増刷が決まりました!」の声を聞くことを心の支えに本を書いている著者もいると思います。(いない?)それは極端にしても、著者が思わず笑顔になってしまう魔法の言葉が「重版決定!」です。これは間違いありません。

重版1回=ボーナス1回分

重版で笑顔になる理由は、その印税額にもあります。

ざっくりと言えば「1回の重版でサラリーマンのボーナス1回分」です。

「ボーナス1回っていくら?」の平均は60万円前後でしょうか。だいたい増刷もそれくらいのイメージです。近年は徐々に渋くなっていますが、、、

実際はボーナスにも幅があって10万円、20万円くらいから100万円、それ以上もあると思いますが、書籍の増刷印税もそれくらいです。まあ、今は1回の重版で100万円も振り込まれるのはレアケースですが。

書籍の価格を1,000円から3,000円、増刷部数を1,000部から5,000部、印税率を10%とすれば重版1回で数十万円というイメージができると思います。数千円でもなければ数百万円でもありません。

ちなみに、重版の印税率は初版からアップすることもありますが、変わらないこともあります。これは出版社によります。初版が8%で増刷時が10%という出版社もあれば、どちらも7%という出版社もあります。もちろん、出版社に大きな貢献をした著者は初版が8%で増刷時が12%、15%ということもありますが。

1つ言えることは、印税率に関して「交渉の余地はない」ということです。著者と出版社の交渉で印税率を決めるというより、出版社ごとに最初から決まっているというイメージです。

ただ、本来の印税率より1%や2%くらい少なくなることは、たまにあります。なぜ?大人の事情です。たとえば、知らないうちに著者と出版社の間に1社入って1%抜いていたとか、、、本当にあった怖い話、、、おっと、これ以上は書けません!フィクションだと思ってくださいね。

重版は早い方が良い!

出版後にどれくらいで重版までこぎつけるか、当然、本の売れ行きによって違いますよね。

芥川賞を獲るような大先生の本は出版前から予約が殺到、出版後数日で早くも重版!

一方、苦節20年、ようやくデビューできた新人作家の本はジワジワ売れて2年後に重版!

どちらも嬉しいことに違いありませんが、重版するなら早い方が良いです。

大先生のように出版後すぐに重版!といかなくても出版後、2~3ヶ月以内に重版がかかれば、その勢いを保って2刷、3刷、、、5刷、6刷、、、10刷、、、の連チャンも期待できます。

早いうちの重版は止まらない、それが「重版」のパワーです。

ただし、調子良く重版していた書籍に1つ星(★☆☆☆☆)の酷評レビューが掲載されて売れ行きがパッタリ止まる、そんなこともあります。ちなみに、1つ星(★☆☆☆☆)の悪評レビューが書かれて逆に売上が伸びることもあります。これがマーケティングの面白いところですが。

もしも、時代に流されない内容の本で重版の連チャンモードに入ったら、おめでとうございます!“印税年金”獲得です。大先生ではなくても5年、10年、この状態が続くこともあります。いやー夢がありますねー。今は厳しいかもしれませんが、、、

一方、出版後2年すぎてようやく増刷された場合、長い間の努力が報われた、これを機にどんどん増刷を続けよう、と思うかもしれませんが、数年経過してからの重版だと残念ながら長く続かないでしょう。よほど右上がりで売上が伸びない限り、2刷で終わりか、良くても3刷くらいでストップかも。

いつ重版されても嬉しいことに変わりありませんが、“印税年金”をゲットしたければ、重版は早い方が良く、1つ星レビューにも負けない勢いが必要です。

売り切れても重版されない?その理由は…

重版が早い方が良い理由はもう1つあります。あまりにも売れ行きが鈍い場合、初版が売り切れた段階で「完売」(売り切れ)になる場合があるからです。

数年かかって初版が売り切れた本に関しては、その後の売れ行きが見込めないので重版しない、などの事情です。

つまり、「売り切れたら増刷される」ではないのです。重版するのは出版社のリスクですから、新たに印刷した版に売れる見込みがある場合のみ、重版が決定されます。当然、「もう売れないでしょう」と判断されれば完売しても増刷されない場合もあります。

とはいえ、完売するのは在庫を売り切った立派な本です。増刷しなかったとはいえ出版社に恩返しもできたはずです。胸を張りましょう。私の本なんか、何冊売れ残っていることか。。。収支が大赤字の本もあります。。。関係者のみなさま、大変申し訳ありません!

ちなみに、多くの場合、増刷されるのは初版が売り切れた後ではありません。見込みがある本は在庫がある程度少なくなった時点で「重版決定!」となるのが一般的です。決定してから版を微調整して印刷所を手配して印刷して梱包して、、、が完了するのに2週間から1ヶ月くらいかかります。市中在庫を切らさないため、早めに重版が決定されるのが一般的です。私の付き合いがある出版社の例ですが。

重版してもボーナスなし!その理由は…

さて、ここまで「重版=ボーナス1回分!」とか「重版の連チャンで印税年金!」など、重版について誇大妄想をふくらませる話ばかり書いてきましたが、ただし、ただし、です。

増刷でボーナス並の印税をゲットできるのは「刷り部数契約」の場合のみです。これは出版契約の1つで、刷った部数だけ印税を振り込んでもらえる「著者にやさしい」契約です。

一方、売れた分の印税が振り込まれる「実売契約」では「増刷ボーナス」はなく、「5,000部増刷!」だからといって、50万円や100万円の臨時収入を得ることはありません。

「実売契約」では粛々と売上集計に基づいて3ヶ月、または6ヶ月、または1年ごとに印税が振り込まれるだけです。「重版したぞ!今月は臨時収入だ!旅行にでも行くぞ!」ということはないのです。

もちろん、売れていれば毎回集計される金額が右上がりで増えていくので、別の意味で笑いは止まりません。年1回締めでも、結構うれしいんですよね。年明けって、いろいろとお金が必要じゃないですか。

まあ、結局は刷り部数契約でも実売契約でも、売れる本を書けば良いということです。面白くないまとめで恐縮ですが。

作家やライターを目指すみなさん、早く重版される本を書けるように頑張ってください!できれば刷り部数契約でね。

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