「印税=10%」ではない!現実的な金額は…そのカラクリは…

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これから本を書いて出版したい方のほとんどが、「印税、いくらもらえるの?」が気になっていることと思います。そのような記事を見かけることもありますが、ほとんどが「印税10%」というおおざっぱすぎる話ばかりなので、私の経験が少しは役に立てばと思い、もう少し現実的な印税率と金額を教えたいと思います。

このページと内容がそっくりのページがありますが、こちらがオリジナルです。ご注意ください。

私の経験上の話をしていきますが、一部の数字はフィクションです。「どの本の話?」というわけではありませんので、悪しからず。。。

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印税の支払い方法には主に2つのタイプがある

まず、具体的な金額を計算する前に、印税の契約パターンから見ていきましょう。一般的には出版契約で決められる印税の支払い方法には次の2つのパターンがあります。

  1. 刷り部数契約 — 刷った部数(発行した部数)だけ印税が支払われる契約。売れなくても刷った部数だけは保証されるので著者に有利と言える。
  2. 実売契約 — 実際に売れた部数を一定期間(3ヶ月、6ヶ月、1年)で集計して印税を支払う契約。著者は売れた分しか印税収入を得られない。
    ※初版保証 — 実売契約と併用され、実売だけだと著者がかわいそうなので、初版発行時については一定部数(初版の40%から70%)の印税を支払うというオプション。

基本的には、刷った部数だけ(売れなくても)印税がもらえるのか、売れた部数の印税しかもらえないのかという考え方です。

本を書く前の方に契約の話などは関係なさそうですが、刷った部数が保証されるのか、売れた部数(+初版保証)しか保証されないのかによって受け取る印税が大きく違ってくる場合があります。それをふまえて、ここから先の話を読んでみてください。

刷り部数契約は、読んで字のごとく、印刷(発行)した部数分の印税をいただくことができる契約です。ひと仕事終えた成果としてまとまった印税をいただいて一区切りしたという充実感はあります。

一方の実売部数契約の場合、長い執筆期間をかけたのに著者に印税がほとんど入ってこないという悲惨な結果になる可能性が小さくないため、「初版保証」されているのが一般的です。

初版保証とは、実売契約だったとしても、初版(最初に刷った部数)については、一定の割合の印税を保証するというオプションです。たとえば、初版が4000部、保証部数率が4割の場合、1600部の印税は保証されます。これにより、基本的には売れた分しか印税をもらえない実売契約であっても、ある程度の収入を確保することができます。

もちろん、それ以降は売れた分しか入ってきません。また、初版保証によって1600部の分の印税はもらってしまっているので、販売部数が1600部を超えないと、いつまでたっても「実売」の分の印税が1円も入ってこないことになります。

そうなるリスク(初版保証の印税しかもらえない)は覚悟しておく必要があります。

どちらのタイプの印税契約が適用されるのか

このように考えると、特に初めて執筆する場合は実売契約よりも刷り部数契約の方が良さそうに思えますが、契約タイプは著者には選択の余地がないのが一般的です。

どちらのタイプの契約が結ばれるかは、基本的には出版社によって決まっています。つまり、どの出版社から本を出すのか話がまとまった時点で運命が決まっていると言えます。心配な方は、打ち合わせの時点で確認した方が良いでしょう(金額ではなく「印税の支払い方法」について)。

もちろん、驚異的に売れる本を書けば契約内容に関係なく笑いが止まらないくらいの印税が入ってきます。そんな方、または、その状態しかイメージしていない楽観的な方には印税率が何パーセントか、などの細かい話は関係ないでしょうが、現実的にはそう上手くいきません。

頑張って一冊の本を書いた成果として、最低限どれくらいのリスク(イメージより金額が少ない)があるのか知っておいて損はないでしょうから、話を続けます。

印税率はどれくらいなのか

よく、書籍の印税率は10%と書かれているブログを見かけますが、これはおおざっぱすぎる話です。

実際は私の経験で言えば6%、7%、8%、10%、12%と、さまざまです。

※もちろん、出版社によってはこれ以上、これ以下の場合もあります。

私が聞いた話では3%、4%ということもあるようです。

その事情は出版社によって違うというか、その本のプロジェクトによって違います。

まず、その出版社で使われる印税率が決まっています。そして、具体的には説明しませんが、間に入った人や会社が1%から2%をもらう場合があります(作業の有無を問わず)。そのため、同じ出版社から本を出す場合でも印税率が違う場合があります。

ただし、印税の数字だけでは損得を測れない面もあります。たとえば、私は経験がありませんが、執筆前の調査のために購入した書籍代を肩代わりしてくれるような場合、印税が3%や4%だからといって不当に低い代価だとは言えないでしょう。

また、低い印税率を提示されたとしても「もっともらえませんか?」と交渉する余地はほとんどありません。「印税は著者と出版者の交渉で決まる」は、ほぼ都市伝説です。交渉で印税率が上がるのは、よほどの大物、または、その出版者に大きな貢献をした実績のある著者くらいです。

10年も本を書いてきた私も先日、信じられないほど短い納期の本の執筆を依頼されましたが、「今回は緊急なんで、印税、アップできますか?」と、さりげなく打診してみましたが「無理です!」とあっさり断られました。出版者側で決まっている印税を交渉でアップしてもらうのは、よほどのケース以外、無理です。私の経験上。

基本的には最初に約束された印税率が下げられることはありませんが、執筆終了後に急遽、作業が必要になって間に人や会社が入った場合など、その人や会社に印税を按分するために印税率を下げられることがないわけでもありません。ただし、これは何らかの突発的な問題が発生した場合のみです。

印税「8%」が「3%」になるカラクリ

また、この8%、10%などの印税率は見かけ上の数字ということに注意が必要です。

単純に、印税率が8%で発行部数が4000部で価格が2000円だから2000円×8%×4000部、というイメージの計算結果とは、かけ離れた金額になる場合があります。

というのは、実売契約の「初版保証」の場合、初版部数の4割、7割という部数しか保証されません(売れなくても「保証していただける」と言った方が良いかもしれません。保証がなければ0円の可能性もあるので)。

つまり、8%の印税だったとしても、実質的に著者が手にする分の印税は3%や5%になってしまうのが現状です(売れなくても3%や5%の印税率に相当する金額をいただけるとも言いますが)。

もちろん、保証部数を突破すれば実売部数の印税をいただくことができますが、、、私の経験では初版保証部数に達しない本が何冊もあります(関係者のみなさま、力不足で申し訳ありません!)。

初版保証の印税しか手にできないリスクも考えておかねばなりません。もちろん、その場合(初版部数を売り切らない場合)は出版社が損をしていることもあるので、仮に次回作品の打ち合わせなどがあった場合は、大きな口をたたかないことをおすすめします。。。

このように、おおざっぱに「印税率って8%とか10%なんでしょ?」と小耳にはさんだ情報で知っていても、必ずしも価格2000円×印税率8%×部数4000部という単純計算で求めた印税額になるわけではありません。そればかりか、イメージから離れた金額になってしまう場合があります。

では、実際に著者が手にする印税はいくらなのか

ここまでの契約、数字をふまえて、実際に一冊書いたときの印税がいくらないのか、泥臭い計算をしてみましょう。

たとえば、1冊2000円のビジネス本を書いたとします。刷り部数契約、実売契約のそれぞれで印税をシミュレーションしてみます。

▼本の想定契約
価格:2000円
印税率:8%
初版部数:4000部

※以下の式の「×0.9」は、所得税が10%源泉徴収されるという意味です(出版社や社会状況によって料率が異なる場合があります)。この金額、50万円に対して5万円、振り込み時点で差し引かれる金額としては小さくないので、受け取れる金額が気になる方のために、以下の印税シミュレーションにも含めることにします。

数字はあくまでフィクションです。

▼著者が手にする印税のシミュレーション(契約別)

  • 刷り部数契約の場合 — 印税=2000円×8%×4000部×0.9=576,000円
  • 実売契約(初版保証4割)の場合 — 印税=2000円×8%×4000部×40%×0.9=230,400円
  • 実売契約(初版保証7割)の場合 — 印税=2000円×8%×4000部×70%×0.9=403,200円

このようなイメージです(計算間違いの場合は、コッソリご指摘ください)。一冊書くと23万円から57万円。ちなみに3000円のコンピュータ本だったとすれば2000円の1.5倍で概算して34万円から85万円。

この単純な例だけ見ても、現実的に受け取れる初版発行時の印税は23万円から85万円と、書く本の種類や契約によって幅があります。

この金額が多いと感じるか少ないと感じるかは人それぞれですが、問題は作業期間です。2週間で終わるとすればおいしい仕事ですが、3ヶ月、6ヶ月、1年以上かかるとすれば、、、

典型的な作業期間のイメージは、執筆前の企画に1ヶ月、執筆に3ヶ月、執筆終了から出版まで2ヶ月、出版から最初の印税入金まで1ヶ月から2ヶ月、合計すると依頼を受けてから入金まで7ヶ月。

「夢の印税生活!」を目指すとすれば1年に何冊書けば良いか、、、
あとは、あなたの計算に任せます。

※本を出版するための作業は「執筆」だけではありません。執筆が終わってからも「著者校正」など重要な作業があります。詳しくは以下のページも参考にしてください。

【関連記事】執筆を依頼されてから本が書店に並ぶまでの流れ

この数字から書籍執筆は儲からないというのが結論ではありません。確かに、売れなければ受け取る印税は初版発行時にいただく金額だけになってしまいますが、売れれば天井無しでこの金額のX倍が入ってくるということです。場合によっては数年にわたって入ってきます。

「夢の印税生活!」も現実味を帯びてくるでしょう。

この「売れれば」が、どれくらいのレベルなのか、もう少し説明します。

「夢の印税生活!」のカギは「増刷印税」

よく書店でベストセラーの本のチラシに「重版決定!」とあるのを見かけませんか?重版とは、最初に「初版第1刷」として刷った部数が売り切れそうなので、もう一回刷ろう!ということです。「増刷」ともよばれます。

この状態になれば、いわゆる「増刷印税」が入ってくるようになります。多くの著者がニンマリする瞬間でもあります。

なぜニンマリするのか。下品な言い方をすれば、「何もしなくてもお金が入ってくる」のが増刷印税のイメージだからです。もちろん、大変な作業の結果として増刷印税をいただくので、「何もせずに」とは違いますが、やはり何度もらってもニンマリしてしまうのが増刷印税です。これが、3刷、4刷、5刷、、、と続けて増刷されれば、、、説明は不要でしょう。

ただし、増刷部数は初版部数より少ないのが一般的です。たとえば、1000部から2000部を「初版第2刷」として刷ります。刷り部数契約の場合、この部数にあたる印税(20万円から50万円)が入ってくることになります。

※この「X刷」は、書籍の最終ページの著者名、出版社名などが書かれた「奥付」(おくづけ)とよばれる部分に印刷されています。その本が売れているか調べたいときは、この「X刷」の数字が目安になります。書店によっては、売れ残った第1刷を販売していることもあるので、あくまで目安ですが。

増刷印税がすぐに振り込まれるのは、刷り部数契約の場合です。実売契約の場合は増刷されたとしても、あくまで期間ごとの売り上げ部数に応じて印税が入ってくるだけです。第2刷以降の増刷については「保証部数」によるまとまった収入は保証されないのが普通です。ただ、「売れ続ければ」定期的に印税が入ってくる状態になります。

いずれにせよ、増刷によって著者がニンマリし、フトコロが温まり、次の作品へのモチベーションが高まるというわけです(私だけ?)。

※ここまでの内容で、刷り部数契約の方が実売契約よりも有利というイメージを持ったかもしれませんが、実売契約も助かることがあります。一定期間で集計して、いつも決まった時期に一定程度の金額が得られるという、うれしい習慣が発生します。もちろん、増刷時に一定金額をもらうのも嬉しいですが、それは不定期です。実売契約によって、「そろそろ、あの実売分の印税が振り込まれる時期だな」と思えるもの嬉しいものです。

ただし、「売れれば」ですが。。。

夢の印税生活は可能か?

ここまでの話から、印税生活するには増刷するような本を書き続けなければならないと思うのは、半分正解ですが、半分間違っています。増刷し続ける本を一冊でも書けば印税生活できる可能性はあるということです。

何冊も当たる本を書く可能性よりも、一発の大ヒットを書く可能性にかける方が現実的だということです。

大ヒットと言っても、年に数百万円入ってくれば良いなら、ミリオンセラーになる必要はありません。

たとえば、2000円の本が1年に1万部売れれば、年間で200万円の印税が入ってきます。これは簡単ではありませんが非現実的な数字でもありません。実際、amazonのランキングで上位に入ってこないような本でも、年に1万部売れている本はあります。つまり、半沢直樹クラスを生み出さなくても質素な印税生活は可能です。

西沢直木クラスでも印税生活が可能かどうか、、、さあ、どうでしょう。。。

ただ、いずれにしても、あなたが印税生活をできる可能性が高いとは言えないのは確かですが、希望はあります!

これから書籍の執筆を始めたい方には、この記事を参考にソロバンをはじいていただき、ぜひ「夢の印税生活」、または現実的な「質素な印税生活」にチャレンジしていただきたいと思います!